しかし、戯言。

ぐうたら社会人がぐうたら思ったこと

どこまでも青く、サラバーズは行く。

せい‐しゅん【青春】

五行説で青は春の色であるところから》
1 夢や希望に満ち活力のみなぎる若い時代を、人生の春にたとえたもの。青年時代。「―を謳歌(おうか)する」「―時代」
2 春。陽春。
「―二三月」〈漱石草枕
 

あなたにとって「青春」とは何だろうか。僕にとっては、恋愛やら、友情やら、嫉妬やら、自分への憤りやら、叶わない夢やら、挫折やら、そんなどうしようもないぐるぐるとした行き場のない思いと延々と格闘し続けた、もどかしく、恥ずかしく、でも、どこかうらやましい日々であった。今でもあの日々のことを思い出すと、心のどこかが掻きむしられ、なぜだか走り出したくなるものである。

The SALOVERSの音楽を聞くと、僕はいつもそんな日々のことを思い出す。いや、多分聞く人全員が思い出すのではないだろうか。このバンドはまさしく「青春」である。どこを切り取っても熱がこもっていて、ダサくて、でもカッコよくて、響きまくる。決して器用なバンドではないが、だからこそ、惹きつけられる魅力を持っていたバンドだった。

初めて僕がこのバンドと出会ったのは、2ndアルバム「バンドを始めた頃」がリリースされた時。

バンドを始めた頃

バンドを始めた頃

 

なんとなく、音楽メディアに注目されている、という理由でCDを借り、ふらっと聞いていた。その頃は、正直なところ「うん、カッコいいな」くらいの軽い印象しか残っていなかったのだが、ある日街中でiPodのシャッフルから流れてきた「狭斜の街」を聞いた時、全身がビビビッ!と衝撃を受けた。イントロからジャキジャキと荒々しく鳴り響くギター。とにかく、痺れた。このバンド凄い。何で今まで気づかなかったのだろう、と。

その後はずっとこのバンドを追いかけ続けていた。時々、「ああ迷ってるなあ」とか、「何やってんだよ」とか思いつつ。

2015年。年が明けて早々、そのニュースは飛び込んできた。「The SALOVERS 無期限活動休止」。こんなに良いバンドの歴史が終わってしまう、と知ってしまった瞬間とてつもなく悔しかった。どう考えても、もっと多くの人に聞かれるべきバンドだった。とはいいつつ、一度もライブに行ったことが無い自分もいて、それをとても悔いた。別れはいつも突然来るのだということを、まじまじと感じさせられた。勿論、ラストライブ(最終日は取れなかったが、その2日前の追加公演はチケットが取れた)に行くことを決めた。

そして、ラストライブの前にリリースされた最後のアルバム。

青春の象徴 恋のすべて

青春の象徴 恋のすべて

 

 「なんで解散するんだよ」とか思っていた自分の前に突き付けられた答えのようなアルバムだった。「こんなにいい曲が沢山鳴らせるのに勿体無い」、という想いも勿論あるのだが、それ以上に聞き終わった後に「ああ、これで終わりだ」と決心させられるような音で溢れている。9曲29分と、あっという間に駆け抜けていくように終わる作品。このスピード、この疾走感こそ、まさにサラバーズであり、そして、僕らがサラバーズに感じる「青春」のすべてなんだろう。

良い曲ばかりなのだけど、特筆すべきは1曲目「Disaster of Youth」と、5曲目「ニーチェに聞く」だ。


Disaster of Youth、直訳すると「青春の災難」。言うならば、彼らにとっての青春の終わりを意味しているのだろう。アルバムには歌詞カードが付いていない(自分の耳で感じて欲しいという意味なのだろう)のだが、この曲で歌われる言葉はどれも鮮烈だ。

「次の街では大人になっているから 今は君とほら 警察に追われるほどの ヤバい速度でぶっ飛ばしたい」「友情の全てを代償にしてまで目指す夢に疲れただけさ 少年は大志を抱きすぎて死んだ そして生まれ変わるのさ」

どの言葉も、まさに自分達の終わりを歌っている。そして、それは彼らだけではなく私たちリスナーにとっての終わり、青春の終わりを意味する。

そして5曲目の「ニーチェに聞く」では、4人が楽しそうにフザケながらも鳴らす音が詰まっている。ああ、この4人あってのバンドだったのだな、と強く感じさせられる曲であった。で、とっても明るい曲なのだけど、そこで歌われる言葉は「人生万歳!僕らの未来は真っ暗闇の素晴らしい世界だ」というもの。一つの時代の終わりを、ここでも感じさせられた。

そして、僕にとって最初で最後のサラバーズ。3月23日、東京キネマ倶楽部でそのライブは行われた。

詳しいライブのレポートはきっと他の音楽媒体の方が詳しいので割愛したい。ただ、見終わった後に「ああなんてカッコいいバンドなんだ」と改めて強く感じさせられ、また、22歳にもなって留年している自分が「バンドやりたい」と思わされるようなライブであったことは書き記す。このバンドは、ロックの泥臭さとか、カッコよさとか、全部詰まっていたのだなと、生で見て改めて感じた。そして、そんなバンドを追い続けられたことは、とても幸せなことだったと思う。

ここで彼らの青春は幕を閉じる。しかし、音楽はいつまでもどこかで鳴り続けるから素晴らしいのである。終わったバンドだから、と言わず、是非多くの人に彼らの音楽を聞いて欲しい。きっと、彼らは今もどこかで走っていて、それを追いかけることは僕らにもまだできるのだから。